売主死亡後に農地法の許可がなされた場合の所有権移転登記手続

 売主甲が譲渡人として所有権移転についての農地法の許可を申請後に死亡し、死亡後に甲名義宛に許可がなされた場合、この許可が有効か、また、有効であるとして登記手続はどのようになるのか。

af9960003868 そもそも、死亡者あての許可が有効なのであろうか。古い質疑応答(登記研究83号)では、農地法3条の許可申請中に売主が死亡した場合でも、その後許可があったときは、当該許可は無効ではないものの、買主死亡による場合は、当該許可は、当然に無効となるとしている。
 質疑応答は次のとおり。
問 農地法3条の許可を受ける条件で売買契約をなし、その許可前に売主が死亡した場合、相続登記を経ずして相続を証する書面及び被相続人の申請に基づく前記許可書を添付して相続人及び買主から売買による所有権移転登記の申請があった場合は、受理して差し支えないと思いますがどうでしょうか。
答 この場合の許可は無効とは解されない。したがって、所問の登記申請は受理して差し支えないものと考える。ただし、買主が死亡した場合であれば、買主名義の許可は、当然に無効となるから念のため申し添える。

同旨のものに次の質疑応答がある。
問 農地法3条の許可があった後、許可書が到達する前に売主が死亡しても、当該許可の効力には消長を来たさないと考えますがいかがですか。
答 御意見のとおりと考えます。

 なお、前段の質疑応答で、「買主死亡による場合は、当該許可は、当然に無効となる」というのは、この質疑応答が農地法3条の許可について論じているものだからだと思われる。農地法3条は買受人も農地として使用することを前提として所有権移転をする場合の許可であるから、買受人の適格性も審査されて許可が出されることとなる。そこで、その買受人が許可前に死亡してしまうと許可は無効と解さざるを得ないのだろう。

 ところで、前段の質疑応答で「相続登記を経ずして相続を証する書面及び被相続人の申請に基づく前記許可書を添付して相続人及び買主から売買による所有権移転登記の申請があった場合は、受理して差し支えない」とする部分が非常に気になる。実体上、許可前に相続が発生しているのに相続登記を経ずして被相続人名義から買主に所有権移転登記をしていいものかどうか。

 調べてみたところ、その後、質疑応答や登記先例が出され、やはり、相続登記を経由することが必要とされていることがわかった。納得である。

(登研133号)
問 農地法3条の許可を停止条件とする売買契約をなし、その許可の申請中売主死亡した後許可があった場合その許可は有効と解するが、この場合はいったん相続人名義に相続登記をなしたる上で売買登記をなすべきか。
答 御意見のとおりと考えます。

 農地の売主死亡後農地法第3条の許可があった場合に、当該農地の相続登記を省略して売買による所有権移転登記を申請することはできない。
(昭40.3.30、民事三発第309号民事局第三課長回答)

(登研545号)
問 農地の売主甲が死亡し、相続人乙への相続登記がされた後に農地法3条の許可が甲あてになされた場合、同許可の効力は相続人乙に及ぶので、右許可書を添付して乙から買主への所有権移転の登記を申請することができると考えますが、いかがでしょうか。
答 御意見のとおりと考えます。