・古い建物を登記するのが融資の条件であると言われました・・・・・・
・不動産の登記をしなければ第三者に権利を主張できません
・住所の表示と土地の地番は異なる場合も多いです

・住宅地図は見方次第で様々なことがわかります
・地積測量図はすべての土地について存在しているわけではありません
・不動産の登記には表題登記と権利の登記があります
・取引先の不動産を調査すれば信用状況がわかることがあります
・「手付金」と「内金」では、法律的な意味が全く違います
・競売物件を買う時のポイント
・離婚の予約
・担保としての代物弁済予約

 

古い建物を登記するのが融資の条件であると言われました・・・・・・

 Q.私の会社では古い事務所と倉庫がありますが、どちらも登記してありません。今般、倉庫は残したまま事務所を建て替えようと銀行に融資を申し込んだところ、倉庫を登記していっしょに担保に入れなければ融資できないと言われました。もちろん新築する事務所と土地は担保に入れるつもりですが、古い倉庫は融資とは関係ありませんので納得できません。
 
af9980011826 法律上、建物は新築後1カ月以内に表題登記(現況を表示するための登記)をなければならないことになっていますが、現実には貴社の建物のように表題登記のされていない建物も多数見受けられます。しかし、担保を設定するためには、その前提として表題登記及び所有権保存登記(所有権を公示する登記)を経由しなければなりません。
 貴社にしてみれば、融資金で建築するのは新しい事務所であり、古い倉庫は関係ないとお考えだと思いますが、銀行が「登記をして欲しい」と要請する理由は次のとおりと思われます。
 融資の返済を担保するためには、通常、抵当権や根抵当権の登記がされますが、これらの登記をしておけば、返済が滞った場合、銀行はその不動産の競売を裁判所に申立て、融資金の回収をすることができます。ところが、担保を取得している土地上に担保を取得する前から未登記の建物が存在する場合には、その建物に対しては抵当権や根抵当権の効力は及びません。したがって、競売で土地と新しい事務所を取得した第三者は、とりあえず貴社が古い倉庫を使用することを甘受しなければなりません。
 このように、競売で取得したとしても、その土地は完全に自由に使用することができないことが明らかですから、現実には競売で入札する人が現れなかったり、未登記建物の所有者に居座られたりして、結局のところ銀行は融資金を回収できないこととなります。
 実は、この現実を逆手に取り、競売不動産の敷地内に簡易な建物を建築し、落札者に法外な立退料を請求するなど、暴力団や不動産ゴロによる競売妨害が頻発した時代もありました。現在は、こうした妨害を排除する法律も整備されてきています。
 とにもかくも、土地上に存在する建物は一括して担保に取得するというのが担保取得の鉄則です。銀行が、古い倉庫について登記をして担保に入れるように請求しているのはこのような事情があるからです。

 

不動産の登記をしなければ第三者に権利を主張できません

af9980025229  不動産登記の効力として1番に挙げられるのが、対抗力です。
 具体例で説明しましょう。
 売主をA、買主をBとして不動産の売買契約を締結したとします。AとBとは契約の当事者ですので、BがAに対して不動産を取得したことを主張できるとしても、BがA以外の人に所有権を取得したことを主張するためには、登記をする必要があります。 ところが、Bが登記をしないでいる間に、AがCとも同じ不動産について売買契約をしたとしましょう。Cとしては、Bがまだ登記をしていないため、Aが所有者であると考えることも当然です。そこで、Cは売買契約の締結後、売買代金も支払って直ちに登記申請をし、CがAから不動産を売買により取得した新所有者として登記記録に登載されたとしましょう。
 Bとしては、自分がすでに売買契約により所有権を取得しているとして、Cに対して登記を消してくれ(=抹消登記)と請求したくなるのも無理からぬことです。一方Cとしても、不動産の登記記録を調査し、Aが所有者であることを確認して売買代金を支払っているので、簡単に抹消の請求に応じるわけにもいきません。
 民法176条は、「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」と規定しています。わかりやすくいえば、売買契約を例にすると、売主の「売る」という申出と買主の「買う」という承諾だけで売買契約が成立し、その他の要件を必要としないのです。
 一方、民法177条では「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と定めています。これによれば、BとしてはCよりも先に売買契約を締結し、正当に所有権を取得しているにもかかわらず、登記をしていなかったために、Aから不動産を取得したことを、登記を先に済ませたCに主張することができなくなるのです。
 このように第三者に主張することができる効力が対抗力です。
 もちろん、AとBとの売買契約は有効に成立しているので、Bとしては、売買代金の返還をAに求めることができますし、さらに不動産を取得できないことにより損害が発生していれば損害賠償をAに求めることは可能です。しかし、その不動産を取得することはできなくなるのです。

 

住所の表示と土地の地番は異なる場合も多いです

  不動産の所在地を特定するために、それぞれの不動産には所在と地番が付されています。そして、従来から、住所を表す方法として、土地の番号である地番を「番地」として用いています。
af9980011849 たとえば、「5番地」「5番地の3」などと住所を表示しているわけです。ですから、この方式を承継している地域では、地番と住所とはほぼ一致することになります。
 しかし、土地の地番は、分筆や合筆により枝番が生じたり、欠番、飛び番の発生が避けられません。また、土地の面積がまちまちですので、1筆の土地の上に複数の家屋が同じ住所を名乗っていたり、複数の土地にまたがって1つの家屋が建っているため住所がわかりにくいこともあります。
 さらに、必要に応じてその時々で分筆や合筆をするため、地図上では地番が順序よく付されていないことになっています。これに加え、町の境が入り組んでいることが多く、様々な不都合が生じています。そこで、住所については「住居表示」を実施することにより、こうした住所の混乱の解消が図られています。
 「住居表示に関する法律」では、住居表示の方法として「街区方式」と「道路方式」とが定められていますが、一般的には「街区方式」が用いられており、道路、鉄道、河川、水路、その他の恒久的な施設で区画された地域に付される「街区符号」(○○番)と、街区内の建物などに付される「住居番号」(○○ 号)とで表示されます。
 住居表示が実施された地域では、こうした街区符号と住居番号が地番とは全く一致しなくなっています。このため、住居表示を実施していない地域と実施した地域とが混在している現在では、住所と地番とが一致していたり相違していたりするので注意が必要です。
 また、町名は、昔ながらの町名(○○町)だけではなく、大きな町になると一丁目、二丁目、三丁目という具合に「丁割り」が行われています、ちなみに、「○○町一丁目」とか「○○二丁目」までが固有の町名です。したがって、1丁目、2丁目ではなく、一丁目、二丁目と漢数字で表すのが正しい表記となります。

 

住宅地図は見方次第で様々なことがわかります

  不動産を調査する際に、登記所に備え付けられている登記簿などとは別に、市販されている住宅地図を欠かすことはできません。
 住宅地図は地図上に土地の地番や住所、居住者の名前などを書き入れた民間の地図メーカーが作成した地図で、一般に販売されており、登記所にも置かれていますので利用しましょう。
af9980011785 住宅地図は、地図上に住所だけを記入しただけのものもありますが、地域によっては地図上に地番、公図番号などを青字で印刷した「ブルーマップ」と呼ばれる地図もあり、地番等を調査するのに便利です。
 住宅地図は、現況に基づき作製されていますので、土地の境界が細部において登記所に備付けられた地図や公図と必ずしも一致していません。また、住宅地図は、あくまで現況を現しているのであって、登記とは直接には結びつきません。なぜなら、土地所有者の土地利用形態は、必ずしも境界に基づいて利用しているわけではなく、隣地の一部を借用し、一体として利用している場合もあるからです。
 また、公図は必ずしも正確な土地の形状を現しているとも言えません。その点、住宅地図は、測量の精度だけをとりあげれば精密な測量により作製されており、公図などの比ではありません。したがって、住宅地図により現況を確認し、これを地図・公図と対照しながら、該当物件を特定する作業を行うことになります。
 余談になりますが、住宅地図に建物の名前が付されていますが、この名前は現地において作業員が一軒一軒、目で表札などを調査し、図面に書き込んでいったものです。時間があれば、自分の近くの住宅地図と現地を見比べてください。表札に苗字だけ表示されている家は住宅地図も苗字だけが表示され、表札その他がなく居住者が特定できないものは、建物に名前が記入されていないことに気がつくと思います。このように、住宅地図の名前は居住者を表しており、所有者を示しているのではありません。
 これらの特徴を理解して住宅地図を利用すれば、有益な情報が多数詰め込まれていることが理解できると思われます。

 

地積測量図はすべての土地について存在しているわけではありません

  地積測量図は、土地の表示登記や分筆登記、地積更正登記の申請書に添付される図面で、地積の求積方法などが表示された図面です。分筆の登記は1筆の土地を2筆以上に分割する場合の登記であり、地積更正登記は、誤って登記されている地積を正しい地積に訂正する登記です。したがって、すべての土地について地積測量図が存在するわけではなく、上記登記を経由した土地のみに地積測量図が存在します。
af9980011802 地積測量図の様式は、昭和37年4月28日に不動産登記法施行細則の一部を改正する省令が制定されて定められましたので、同省令が施行された同年5月1日より前に分筆等がなされている土地については地積測量図が存在しません。地積測量図は、原則として250分の1の縮尺で作製され、土地の形状・所在・地番・隣地地番・方位・地積・求積方法・作製年月日が記載され、申請人と作製者の署名押印がされています。筆界に境界標がある場合には記載されていますが、一般的には境界標の凡例が図面の下部に記載され、この凡例の記号を利用して境界標の種類が記載されています。
 境界標は、一般的には、コンクリート杭は「C」、プラスチック杭は「P」、金属標は「R」などが用いられています。この境界標を現地で確認することにより不動産取引などのひとつの資料として用いられます。境界標は測量時に存在していて永続性があるものとされていますが、年月の経過により何らかの理由により境界標が失われることもあります。境界標は地積測量図と対照して土地の境界を明確にする大変に重要なものですが、境界標が失われると、せっかく地積測量図に境界標が明示されていても、土地境界確定に困難を伴うことがあります。刑法でも境界損壊罪として、境界標の損壊・移動・除去した者に対しては、5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処すると規定されています。
 地積測量図は、分筆登記・地積更正登記の申請時に申請人が作製し登記所に提出され、閲覧に供されるのですが、地積測量図は土地が滅失(土地の滅失はまれにしか発生しませんが、土地が海面下の土地となれば滅失することになります)しない限り登記所に永久に保存される図面です。
 たとえば、いったん分筆登記された土地がさらに分筆登記がされ、先の分筆登記申請時に提出された図面と現在の地形・地積が異なることになったとしても、先に提出された地積測量図は、バインダー式ファイルから除却されることなく、後から提出された地積測量図とともに閲覧に供されます。
 したがって、1筆の土地に数枚の地積測量図が提出されていることもありますが、地積測量図を閲覧する際には、登記記録の表題部と見比べながら、提出された地積測量図がどの時点で作成されたものであるのかも確認する必要があります。

 

不動産の登記には表題登記と権利の登記があります

af9980011820  不動産の登記のうち、表題に関する登記(土地の地目変更、分筆、合筆、建物の新築、増築、滅失等)については、原則として、その不動産の所有者が登記の申請をする義務があるとされています。これは、表題に関する登記は不動産の物理的な状況を客観的に把握・記録し、これを公示することを主な目的としているからです。
 これに対し、司法書士が扱っている不動産の権利に関する登記は、その申請をするかどうかは申請人の自由な判断に任されています。たとえば、土地を購入して所有権を取得したとしても、その登記をするかどうかは所有権を取得した者の自由に任されているのです。これは、登記することによって得られる公示力、対抗力などのメリットを受けるかどうかは、その権利を持つ者が判断すればよいとされているからです。したがって、権利に関する登記は、原則として当事者の申請によって行われることとなります。
 このように、権利に関する登記は当事者の申請によるものとされていることから、登記をすることで利益を受ける者(登記権利者)と不利益を被る者(登記義務者)とが共同して申請することを原則としています。こうすることによって、登記申請の内容が真実のものであることが保証できるというわけです。
 登記権利者と登記義務者との共同申請の例外としては、所有権保存登記、判決などにより登記手続する命令が下されて単独で申請する場合、相続により所有権などを取得した場合、住所変更などによる所有権登記名義人表示変更登記などがあります。
 共同申請にしても、単独申請にしても、権利に関する登記は、登記所に受け付けられた順位によってその効力の優劣が決まります。ですから、登記申請書の受付順位を明確にするということはきわめて重要な意味があるのです。

 

取引先の不動産を調査すれば信用状況がわかることがあります

  不安定なこの時代、取引先の信用調査は企業の生き残りに欠かせない時代になっています。もっとも手軽な信用調査の方法は、取引先や取引先の代表者が所有する不動産登記の情報を調査することですが、この調査によって、どのような借り入れに対して担保を提供しているか見当がつき、取引先の信用状況を伺い知ることができます。
af9980025229 ところで、取引先や取引先の代表者が所有する資産状況を調査しようとする場合、必ずしも不動産の所在地番等が特定できるとは限りませんし、むしろ特定できない場合の方が多いかもしれません。このような場合、どのような手順で調査を進めればよいのでしょうか。
 まず、取引先や代表者の住所(相手方が会社であれば、会社の登記記録から代表者の住所が判明します)を住宅地図から捜し出し、調査物件のおおよその地番を特定します(ほとんどの法務局には住宅地図が置かれています)。住居表示が実施されている地域(住所に「○番○号」が使われている)では住所と地番とが全く異なっていますが、法務局内に住居表示と地番との対照表が置かれていることも多いため、ある程度の地番の特定は可能であると思われます。
 相手方の営業所などの現況を知っている場合には、登記事項証明書を請求する前に該当地番の公図を閲覧すれば、付近の道路付き等から明確な地番が判明すると思われます。
 建物の家屋番号は建物の敷地となっている土地の地番と一致している場合が多いのですが、必ずしも一致していなかったり、同じ敷地内に複数の建物がある場合には家屋番号に枝番がついていることもあります。
 このようにしてある程度の地番や家屋番号が特定できましたら目的の不動産にたどりつくものと思われます。
 また、目的の不動産に抵当権などの担保が登記されていたら、共同担保目録付の登記事項証明書を請求すれば、ともに担保に入っている不動産を調べることができます。

 

「手付金」と「内金」では、法律的な意味が全く違います

  不動産や商品などの売買契約の際、「契約金」などの名目で、代金の一部の授受がなされることがありますが、この「契約金」が、「手付金」としての意味を持っているのか、「内金」としての意味なのかで、その性質が大きく異なってきます。
 「手付金」は、特に定めがなければ一般的には解約手付と考えられ、相手方が契約の履行に着手する前であれば、何の法律的な理由がなくても契約を解除することができます。買主が契約をやめたければ既に支払った手付金を放棄して解除することができますし、売主がやめたければ手付金の倍額を相手方に支払えばよいわけです。
 一方、「内金」の場合には、契約当事者双方とも、法律上の解除原因がなければ一方的に契約を解除することはできません(もちろん、双方の合意により解除することは可能です)。
 なお、法律上の解除原因とは、履行遅滞(当事者の一方が履行しない場合に相当の期間を定めて催告したにもかかわらず、その期間内に履行しないとき)、履行不能(履行すべき債務の全部または一部が、履行すべき者の原因で履行ができなくなってしまったとき)などがあります。
 「内金」はあくまでも売買代金の一部内入れという意味ですから、もしも売買契約が解除されてしまえば契約がなかった状態に復元するするのが原則です。つまり、内金を受け取った方は、相手方にその全額を返還しなければなりません。
 また、法律上の解除原因によって契約が解除された場合には、解除の原因を作った相手方に対して損害賠償を請求することができることになっていますが、「手付金」が授受されている場合には、あらかじめ双方に法律的な理由なしに解除権を認めていることから、損害賠償を請求することができないこととされています。この点、「内金」の場合には、原則どおり損害賠償をすることができるわけです。
 このように、授受された金銭が「内金」としての性格なのか、「手付金」としての意味があるのかで、その効果は大きく異なってきます。ですから、「契約金」などの名目を使う場合でも、その性質を明確にしておく必要があるでしょう。

 

競売物件を買う時のポイント

 最近は競売される不動産が増加したことに加え、制度の改正により昔より僅かですが競売を利用し安くなり、さらに「競売物件は市価より安い」と言われるため、競売物件が脚光を浴びています。
 しかし、安いからと安易に手を出すと大やけどを負いかねません。逆に、ポイントさえ押さえることができれば、お買い得の物件を手に入れることができるかもしれません。ここでは、3つのポイントをあげておきましょう。
■資料の調査
 裁判所では、競売物件明細書、現況調査報告書、評価書(3点セットと言われている)を公開しています。まず、この資料を徹底的に調べることが必要です。特に、競売後に引き受けなければならない権利(賃借権など)があるのか、競売を妨害しようとする占有者がいるのか、マンションの場合には管理費等の滞納はないか(管理費、修繕積立金等を滞納していた場合、買受人が支払わなければなりません)など、必ず専門家の意見を聞くべきです。
■現場の調査
 百聞は一見にしかず。必ず現場を見るべきです。もとの所有者が住んでいる場合には、すぐに立ち退いてもらえそうか、その人柄なども調査しておきましょう。全く法的権限のない占有者(占有屋)がいる場合、現実に立ち退かせるためには大金が必要となるかもしれません。また、建物は原則として中を見ることができません。ある程度の修繕費は覚悟しておくべきでしょう。
■自己資金のみならず、銀行ローンも使えるようになりました
 競売が利用しやすくなったひとつの理由として、「入札に銀行ローンが使えるようになった」と言われています。法律も整備され、競売制度はローンにも対応できるよう改正されました(具体的には、裁判所が法務局へ嘱託する所有権移転登記書類を司法書士等が預かることができるようにされたため、銀行の担保設定登記が所有権移転登記と間断なくできるようになりました)。
 銀行ローンで融資を受けて競売代金を支払う場合には、裁判所に事前に申し出をする必要がありますので、早めに銀行に相談する必要があります。

 

離婚の予約

 将来、特定の不動産を売買するよう約束したり、一定の金銭の貸借りを約束したりすることは日常行われています。そして、このような予約に関し、不動産の所有権移転を保全するための仮登記や、金銭貸借の担保として不動産に抵当権を設定する予約をした場合の抵当権設定請求権の仮登記が行われることがあります。
 それでは、離婚を前提として話し合っている夫婦は、例えば夫が妻に対し財産分与として土地を譲渡するという予約が成立した場合には、所有権移転請求権仮登記をすることができるのでしょうか。
 結論から言いますと、このような仮登記はすることができません。それでは、売買予約のような場合と何が異なるのでしょうか。
 婚姻や離婚、養子縁組などの身分上の効果を生じる法律行為は「身分行為」と呼ばれています。それに対し、不動産を売買したり、その他の経済効果を生じるような法律行為は「財産上の法律行為」と呼ばれています。身分行為は行為をする本人の真意が重んじられるため、身分行為に条件や期限をつけたり、代理人に身分行為をさせたりすることはできないものとされています。そして、予約をすることもできないとされています。
 協議離婚は、離婚の際(離婚届の際)に両当事者が離婚の意思を有していることが必要ですが、もしも離婚の予約が許されるならば、実際に離婚届を提出する段階で気持ちが変わったにもかかわらず、真意を曲げてでも離婚をするということになってしまいます。したがって、離婚の予約は無効とされているのです。
 財産分与の請求権は離婚の成立を前提としていますから、離婚予約が無効である限り、財産分与の請求権という権利は存在し得ないことになります。したがって、財産分与請求権は仮登記することもできないということになります。

 

担保としての代物弁済予約

 金銭貸借の弁済を担保するためには、通常、抵当権や根抵当権が利用されており、借り主や担保提供者の不動産にその旨の登記がされますが、時折、代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権の仮登記がなされている登記簿を見かけることがあります。この登記は、本来ならば金銭で返済しなければならないところ、金銭のかわりに不動産の所有権を引き渡せば金銭の返済があったことにすることを予約したという仮登記です。この予約は貸主の意思表示により完結することができるため、一見、強力な債権回収手段のように見えます。
 しかし、貸し金の金額よりも低額な不動産ならまだしも、著しく高額な不動産を代物弁済しなければならないとなると、不動産所有者としては僅かな借金のために高額な不動産を取られることになってしまいます。
 そこで、法律は、このような代物弁済予約の仮登記が金銭の支払いを担保する目的でなされた場合には、予約完結の意思表示があったとしても直ちに所有権は移転しないものとし、貸主に貸し金と不動産価額との差について清算を義務付けています(仮登記担保契約に関する法律 )。代物弁済予約ではなく、停止条件付代物弁済や売買予約などにより所有権の仮登記がなされた場合にも、それが金銭の支払いの担保を目的としてなされた場合には、この法律が適用されます。
 ただ、一口に「清算」といっても、その方法は法律で具体的に定められています。貸主は不動産の見積額と返済を受ける金額を不動産所有者に通知するとともに、仮登記より遅く登記された担保権者などにも通知しなければなりません。なぜなら、これらの担保は所有権移転の本登記によって抹消されてしまうため、所有者に返還すべき清算金がある場合にはその金額から回収する権利を有しており、その機会を与えなければならないからです。
この他にも利害調整に関して詳細な規定が定められており、実際に所有権仮登記により債権回収を図るのは手続的に大変な面があります。したがって、手続が煩雑なうえ、結果的には貸し金以上の代物弁済を受ける旨味もなく、しかも、本当は必要ではない不動産を手に入れることになりかねず、これを換価するために確実に処分できる保証もないため、それほど優れた債権保全方法とは思われません。